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クーラーの効いたCaféでゆっくり読みたい本(小説)2017年芥川賞編

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早々に梅雨も明けて、暑い夏の到来です。

真夏日が続いて、家でもクーラーなしでは生活できないくらい暑くなってきました。

読書好きな方は家でクーラーでもかけてじっくり読んでもよし、最近あんまり行く事の無くなった図書館なんかもいいかな。(でも、最近図書館に行ったら意外と土日は混んでいて、座る席を確保するのも大変でした)

クーラーの効いたCaféに行ってコーヒーを飲みながら、たまにはゆっくりと読書もいいのではないでしょうか。

 

人によって時間の使い方は色々あるでしょうけれど、たまの休みに何も考えずに読書に没頭してみたりというのも贅沢な時間の使い方です。

何を読んでいいのか、最近の本やちょっと前の本でも、本選びから迷う方も多いのでは? 

せっかくのお休みの日に、読もうと思って本を買ったのにつまらなかったら・・・最悪ですよね。

そんな時、私が本を選ぶ一つの基準としているのが、『〇〇賞を受賞した本』という肩書です。

賞をとったからといって決して必ずしも面白いとは言えませんが、ある程度のレベルの面白さは保証されていると思います。

今日は、そんな中から純文学の中でも最高の賞『芥川賞』受賞作家を中心に

おすすすめの本を紹介していきたいと思います。

 

 百年泥 第158回芥川賞受賞 - 石井 遊佳

百年泥 第158回芥川賞受賞

 

 今年受賞した2作品のうちの一つ「百年泥

最初、読み始めるとインドの日本語講師の日常の話から始まって、段々と現実離れした世界観が表現されていきます。

読んでいくうちに、「あ、これは現実の話じゃなくて夢の世界やSFの世界観を持った話だったんだ」と気付かされます。

それはエッセイの様にすらすらと読みやすい文体から、現実世界を思わせるような感覚になっていくのだと思います。

途中から、「実はそうじゃない。小説だよ」という切り替えについていけないと面白くなくなって途中で読むのを止めてしまう可能性もあるかもしれません・・・ちょっと注意が必要です。

 

商品の説明

メディア掲載レビューほか

 

川底に沈殿した混沌

芥川賞を受賞した石井遊佳百年泥』の語り部は、多重債務返済のため、南インドのチェンナイで日本語教師として働く女性。彼女が現地に暮らしてほどなく100年に一度の洪水が襲い、アダイヤール川が氾濫して川底にあった100年分の泥が流出する。

洪水後、大河にかかる橋の端から端までつもった泥の山は強烈な異臭を放つが、集まってきた地元の人々は、そこから行方不明者や故人を引きずり出し、何事もなかったように会話をはじめる。他にも、ウイスキーボトルや人魚のミイラや大阪万博の記念コインなど雑多な品々も出てきて、そのたびに語り部の記憶とともに、教え子の過去やインドの因習の内実まで明らかになっていく。空には、天使のような翼をつけて移動する者たちまで登場する。

過去と現在、生者と死者、現実と幻想……一世紀もの時間をかけて溜まった泥の中ではすべて溶けあって存在し、時にこうして揃って現れては混沌とした世界を現出する。インドという舞台を活かしたマジックリアリズムといえばそのとおりだが、読後の私は、これは仏教的な思想を反映した物語と感じた。

冗舌な文体が醸し出すあっけらかんとした混沌は、彼我の違いを超えて流れていく私たちの人生、あるいは命を描いた結果なのだろう。それはまさに川の流れに違いなく、その底に沈殿した泥には現在に隠れた過去も、生者と交わった死者も、達成されなかった希望も眠っている。

鴨長明が「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」と書いた川の底には、どんな泥が溜まっていただろうか。ついそんなことまで想わせる快作。

評者:長薗安浩

(週刊朝日 掲載)

 

内容紹介

私はチェンナイ生活三か月半にして、百年に一度の洪水に遭遇した。橋の下に逆巻く川の流れの泥から百年の記憶が蘇る! かつて綴られなかった手紙、眺められなかった風景、聴かれなかった歌。話されなかったことば、濡れなかった雨、ふれられなかった唇が、百年泥だ。流れゆくのは――あったかもしれない人生、群れみだれる人びと……

内容(「BOOK」データベースより)

チェンナイで百年に一度の洪水!アダイヤール川氾濫、市内ほぼ全域浸水か。橋の下には猛烈な勢いで逆巻く川、橋の上にはそれを見物しに雲集したとてつもない人びとの群れ…こうなにもかも泥まみれでは、どれが私の記憶、どれが誰の記憶かなど知りようがないではないか?洪水の泥から百年の記憶が蘇る。大阪生まれインド発、けったいな荒唐無稽―魔術的でリアルな新文学!第158回芥川賞受賞!

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

石井/遊佳
1963年11月大阪府枚方市生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程満期退学。日本語教師。2017年『百年泥』で新潮新人賞、第一五八回芥川龍之介賞を受賞。インド、タミル・ナードゥ州チェンナイ市在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 

 

 おらおらでひとりいぐも 第158回芥川賞受賞 - 若竹千佐子

おらおらでひとりいぐも 第158回芥川賞受賞

 

 今年受賞した2作品のうちのもう一つ「おらおらでひとりいぐも」

題名が何の事だかさっぱりわかりません。

こちらの小説は、東京近郊在住で一人暮らしになった田舎(岩手県)出身のおばあさんのお話です。

のっけから方言で始まり、途中にも方言での語りや表現が随所に見られます。

その方言から、「ちょっと取っ付きにくい小説をイメージしてしてしまうかもしれません。

私も内容もどうせ田舎の話とか昔の話とかなんだろうな」と思って読み始めました。

しかし確かに内容的には昔の事から現在に至るまでの話であったり、頭の中の空想なんですが、方言を駆使した感情表現と主人公が74歳になるまでの様々な出来事、心の中の変化等、この小説の中にはいろんな思いが感じ取れます。

「人生って何なんだろう」と思った時に、この作者の63歳にしてこのような私小説的な表現ができるのか・・・と思い、とても感動しました。

老いがエネルギーとなって表現された、方言を駆使した素晴らしい小説に出会えたことに感謝です。

 

商品の説明

メディア掲載レビューほか

 

幸せな狂気

〈あいやぁ、おらの頭このごろ、なんぼがおがしくなってきたんでねべが〉

昨年度の文藝賞を受賞した若竹千佐子の『おらおらでひとりいぐも』は、主人公桃子さん74歳の、内面から勝手に湧きあがってくる東北弁の声ではじまる。

24歳の秋、桃子さんは東京五輪のファンファーレに背中を押されるように故郷を離れ、身ひとつで上京。それから住みこみで働き、美男と出会って結婚し、彼の理想の女となるべく努め、都市近郊の住宅地で2児を産んで育て、15年前に夫に先立たれた。ひとり残された桃子さん、息子と娘とは疎遠だが、地球46億年の歴史に関するノートを作っては読み、万事に問いを立てて意味を探求するうちに、自身の内側に性別も年齢も不詳の大勢の声を聞くようになった。それらの声は桃子さんに賛否の主張をするだけでなく、時にジャズセッションよろしく議論までする始末。どれどれと桃子さんが内面を眺めてみれば、最古層から聞こえてくるのは捨てた故郷の方言だった。

桃子さんの人生は戦後の日本女性の典型かもしれないが、他人が思うほど悪いものではない。最愛の夫を喪ったときに根底から生き方を変え、世間の規範など気にせず、〈おらはおらに従う〉ようになったのだ。話し相手は生者とは限らない。そんな〈幸せな狂気〉を抱えて桃子さんは孤独と生き、未知の世界へひとりで行こうとしている。

日々を重ねなければ得られない感情には、〈悲しみがこさえる喜び〉もあるのだ。63歳の新人作家は三人称と一人称が渾然一体となった語りを駆使し、その実際を鮮やかに描いてみせた。お見事!

評者:長薗安浩

(週刊朝日 掲載)

 

内容紹介


74歳、ひとり暮らしの桃子さん。
おらの今は、こわいものなし。

結婚を3日後に控えた24歳の秋、東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように、故郷を飛び出した桃子さん。
身ひとつで上野駅に降り立ってから50年――住み込みのアルバイト、周造との出会いと結婚、二児の誕生と成長、そして夫の死。
「この先一人でどやって暮らす。こまったぁどうすんべぇ」
40年来住み慣れた都市近郊の新興住宅で、ひとり茶をすすり、ねずみの音に耳をすませるうちに、桃子さんの内から外から、声がジャズのセッションのように湧きあがる。
捨てた故郷、疎遠になった息子と娘、そして亡き夫への愛。震えるような悲しみの果てに、桃子さんが辿り着いたものとは――

青春小説の対極、玄冬小説の誕生! 
*玄冬小説とは……歳をとるのも悪くない、と思えるような小説のこと。
新たな老いの境地を描いた感動作。第54回文藝賞受賞作。
主婦から小説家へーー63歳、史上最年長受賞。

文藝賞全選考委員絶賛! 
東京オリンピックの年に上京し、二人の子どもを産み育て、主婦として家族のために生き、夫を送って「おひとりさまの老後」を迎えた桃子さんは、戦後の日本女性を凝縮した存在だ。桃子さんは私のことだ、私の母のことだ、明日の私の姿だ、と感じる人が大勢いるはず」
――斎藤美奈子
宮澤賢治「永訣の朝」にある「Ora Orade Shitori egumo」のフレーズ。それを悲しみのうちに死ぬの意ではなく、独り生きていく「自由」と「意欲」に結びつけた。「老い」をエネルギーとして生きるための、新しい文学が生み出された」
――藤沢周
「人の気持ちは一色ではないということを、若竹さんはよくぞ摑んだ。年を経たからこその、若々しい小説」
――保坂和志
「取り返しのつかない命のなかで、個人の自由や自立と、その反対側にある重くて辛いものも含めた両方を受け取って、人生を肯定的にとらえるまでにいたったのが見事」
――町田康

◎早くも話題沸騰! 反響続々! 
「ほんとはね、ほんとは「独りがいい」。出会いも歓びだが、死別も解放だ。地声で語られた女のホンネが炸裂! 」
――上野千鶴子
「死すことのない共同体の言葉。それが支える「老い」の姿に初めて触れた。「頭の中に大勢の人たちがいる」ことは、きっと孤独ではない」
――小林紀晴氏 
朝日新聞、読売新聞、産経新聞東京新聞共同通信ほか、絶賛の声多数! 

内容(「BOOK」データベースより)

74歳、ひとり暮らしの桃子さん。夫に死なれ、子どもとは疎遠。新たな「老いの境地」を描いた感動作!圧倒的自由!賑やかな孤独!63歳・史上最年長受賞、渾身のデビュー作!第54回文藝賞受賞作。

著者について

若竹千佐子(わかたけ ちさこ)1954年、岩手県遠野市生まれ。遠野で育ち、子どもの頃から小説家になりたいと思っていた。また、その頃父が広沢虎造浪曲を好んで聴いていた。
岩手大学教育学部卒業後は、教員をめざして県内で臨時採用教員として働きながら教員採用試験を受け続けるが、毎年ことごとく失敗。目の前が真っ暗になるほど落ち込むなかで夫と出会い、結婚。30歳で上京し、息子と娘の二児に恵まれる。都心近郊の住宅地に住みながら子育てをする。この時は、妻として夫を支えることが人生の第一義だと考えていた。その傍ら深沢七郎石牟礼道子河合隼雄上野千鶴子らの本が好きで読んでいた。
55歳の時、夫が脳梗塞で死去。あまりにも突然の死に悲しみに暮れ、自宅に籠る日々を送っていると、息子から「どこにいても寂しいんだから、外に出ろ」と小説講座を進められ、講座に通いはじめる。それまでも小説を書きたいと思っていたが書くべきことが見つからず、完成したことはなかった。8年の時を経て本作を執筆し、第54回文藝賞を受賞。

 

 

いかがでしょう?

芥川賞受賞作品は、やっぱり世界観や文体、読んでいる時のリズム感等全てのバランスがとてもよく仕上がった小説ばかりです。

もし、気に入ったものがあれば過去の受賞作品も調べて読んでみるのもいいと思います。

 

 

2017年上期受賞作品

 

影裏 第157回芥川賞受賞

 

 

 2016年下期受賞作品

 

 
 
しんせかい

 

2016年上期受賞作品

 

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